悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





やっぱりそうなってしまったか。

私の契約相手は貴族だ。
金も権力もある。つまり何でもできる。

こうなってしまう可能性を私はずっと考えていた。
契約満了と同時にルードヴィング伯爵に裏切られ、暗殺されるのではないか、と。

私が代役を務めたからこそ、リタは文武両道、才色兼備、完璧なご令嬢としてその名をこの帝国内に馳せていた。
私が代役を務めるまではリタは容姿端麗なだけのただのわがままお嬢様だった。
その評価を代役の私が変えた。

完璧なリタは私なのだ。
それを知っているのはリタと私とルードヴィング伯爵とほんの一部の人間だけ。

完璧なリタは実は代役でした。
本物は美しいだけで何もできません。そんなことが世間に知られてしまったらリタはどうなる?
リタの評判、評価は地に落ち、最悪ルードヴィング家にも不利益をもたらすだろう。

契約で私は自分がリタの代役だったと話せない。
だが、何かの拍子に私がそれを喋ったら?
偶然何かの関係でそのことが漏れてしまったら?
私という存在はルードヴィング家にとって脅威でしかないのだ。
だから暗殺をする。死んでしまえば何も言えないから。

そんな最悪のシナリオも考えてはいたが、まさか契約満了した婚約式の夜を狙われるとは思わなかった。

どうやらルードヴィング伯爵は早く私を始末したいらしい。
今の私は絹のワンピースに何も持っていない状態で丸腰だ。
対する相手は殺しのプロ。しかも3人もいる。
剣術が優れている私を暗殺する為にはこのくらい人がいると判断しての人員だろう。

本当、嫌になる。
今まで一生懸命働いてきて最後に裏切られるって。