「滞在期間は3日。急だが、明後日からだそうだ」
「3日?」
公爵の言葉にユリウスの機嫌がますます悪くなる。
「何故、そんなにも長い時間ステラを宮殿に行かせなければならないのですか。せめて1日、顔を見せる程度でいいでしょう」
ユリウスはそう言うとじっと公爵を見て公爵の次の言葉を待った。
見ているだけだろうがその視線は側から見ると睨んでいるようにも見える。
今のユリウスはいつもの冷たい顔にさらに怒りが加わり、迫力が増していた。
美人が怒ると怖いとはよく聞くが、ここまで怖いとは。
ユリウスが何故そんなにも怒っているのかわからなかったが、私はユリウスを心の中で精一杯応援していた。
頑張れ、ユリウス。負けるな、ユリウス。
絶対宮殿になんか行きたくない。
宮殿に行ったら100%リタに会ってしまう。最悪バレて殺される。
「ユリウスの言いたいこともわかる。だが、皇帝陛下直々のご命令だ。何故かわからないが陛下はステラにご興味を示されているようだ」
「…ですか、そこをフランドルの力でどうにか」
「無理だ。陛下のご命令は絶対だ。それはユリウスもわかっているだろう」
「…」
フランドル公爵一家の男たちが難しい顔で陛下の招待状について話し合っている。
だが、その横で夫人は何ともマイペースなものだった。



