「…俺なら確実にステラを殺せます。その為に今まで力をつけてきたのですから」
俺は伯爵様に不敵に微笑む。
俺がステラ様を絶対に殺すと信じさせる為に。
「わかっている。お前の実力は我が家一だ。次はお前に任せる。ステラを見つけ次第さっさと殺せ」
「はい。お任せください」
どこか疲れた様子で俺に命令する伯爵様に俺は深々と頭を下げた。
「ねぇ、セス」
「はい、何でしょうか」
頭を下げる俺にリタ様の愉快そうな声が聞こえる。
「ステラを殺す時は私を絶対に呼びなさい。私の手であの女を直接痛めつけたいの。いいわね」
「はい。かしこまりました」
残忍なリタ様の笑い声は女神ではなく、まるで悪魔のようだ。
そう心の中で思いながらも俺はリタ様に忠実な執事のフリをして、その悪魔の手先のようにリタ様に淡々と返事をした。
*****
伯爵邸内にある自室に戻ってまずはコーヒーを作る。
そしてそれをカップに淹れると俺はやっとソファに腰掛けた。
「…はぁ」
小さく息を吐いてカップに口をつける。
今日も1日いろいろな業務に追われ、こうやってゆっくりと休む暇もなかった。
俺は誰よりも早くステラ様を見つけ出す為に通常業務以外の時間は全てステラ様捜索に充てていた。
もう誰にもステラ様を害させない為に。
伯爵様の読みは当たっていたのだ。
俺がステラ様を殺せない、と。
俺はずっとステラ様を殺せと言われたその日からどうすればステラ様を救えるか考えていた。
俺が生涯仕えたいと思っているのはリタ様じゃない。ステラ様だ。



