「それで?この店で欲しいものは?」
「これなんかおすすめですよ!お嬢様!」
私に冷たい表情のまま圧をかけるユリウスとそんな圧をかけられている私に何か商品を買ってもらおうと笑顔で接客をする店主の男に私は挟まれる。
ユリウスと一緒にいるおかげで私まで貴族扱いだ。
店主のいる手前、「ここには欲しいものはないかな」とはとても言えず、私は適当に目に入った比較的安い花の絵が描かれた鉛筆を一本選んでしまった。
それからドライフラワーの店にも行こうとしたユリウスを何とか阻止して私たちは再び街の中を歩き出した。
「ユリウス様、ステラ様、ただいま戻りました」
程なくして、両手にいちご飴とわたがしを持った大男、ジャンが私たちの前に現れた。
全く似合っていないがジャンは好き好んでこの二つを持っている訳ではない。主人に言われて仕方なく持っているのである。このミスマッチな可愛らしさは不本意に違いない。
「これをどうぞ」
ジャンはそう言うとユリウスにではなく、私にいちご飴を渡した。
あくまでもいちご飴を頼んだのは今私の隣で無の状態で立っている男なのだが、ジャンはそれを私が食べたかったものだと理解していたらしい。
「ありがとう、ジャン」
「いえいえ。いちご飴の後はこちらのわたがしを。からあげはできたての方がいいかと思いまして、ステラ様が食べるタイミングで買いに行こうと思っています。あ、ですが今食べたい場合はすぐにお申し付けくださいませ。すぐに買いに行きますので」
「あー。うん」
いちご飴を受け取る私に丁寧に説明をしてくれるジャンに私は曖昧な返事をしてしまった。
至れり尽くせりで申し訳なくなってきた。
そんなジャンと私のやり取りを何故かユリウスは誇らしげに見ていた。
「どうだ?フランドルの者はきちんとしているだろう?」と目で言われている気分だ。
その後、私はなるべく一つの店をジッと見ることをやめた。そうしなければユリウスが全部買い与えようとするからだ。
私はそんなにも食べれないし、物もいらない。
せめて自分の為にお金を使ってくれ、ユリウス。



