ちなみに私が代役を務めていたリタはユリウスとは正反対で花祭りを目一杯楽しんでいた。
情勢がとかそんなもの一切考えていない。
好きなように遊び、好きなように食べ、好きたように買い物をしていたらしい。
リタの外出時にもちろん私の外出は許されない。
なので実を言うと花祭りに行ったのは孤児院にいた8年前が最後だったので、私は久しぶりの花祭りにワクワクしていた。
私の目の前に広がる花祭りに湧く街は8年前に見た花祭りと何も変わらない。
街中にいろいろな出店が並び、少し広い場所にはステージが用意され、劇や歌が披露されている。
その全てに色とりどりの花が飾られており、人々が歩くたびに花びらたち舞う光景はまるで街に巨大な花畑が現れたかのようだった。
「うわぁ…」
あっちにはいちご飴、こっちにはわたがし、向こうにはからあげ。
それからすぐそこには花をモチーフにした小物の店があり、その向かいにはドライフラワーの店まである。
どれもこれも興味深い。
「…欲しいものがたくさんありそうだな。ジャン」
いろいろなところに目移りをしていると冷たい表情ながらどこか優しげに私を見つめるユリウスが自身の護衛騎士ジャンを呼んだ。
ユリウスに呼ばれてユリウスよりも一回りほど年上の焦茶の髪をした大きな男がユリウスの隣に現れる。
「あそこのいちご飴とわたがしとからあげを買って来い。金はこれだけあれば足りるだろう」
そして自分の元へやってきたジャンに手短にユリウスはそう言うと、懐から小袋を出し、それをジャンに渡した。
食いしん坊か?
一気に食べるな。
イメージとは違うユリウスの言動に首を傾げる。ユリウスはそんな私なんてお構いなく、私の手を引き、先ほど私が見ていた花をモチーフにした小物の店へ私を連れて行った。



