「私の為に用意していたものがまだあるの?」
「はい。ここは俺の屋敷である以前にアナタの為に用意した屋敷ですから」
「へぇ。じゃあ明日から早速案内してよ」
「もちろんです」
空色の瞳を細め、笑みを深めるセスからはあの仄暗い感情は感じられないものの、愛情は感じてしまう。
セスは本当に私を慕っているようだ。
何だかセスからの慣れない暖かい視線に、だんだんいたたまれない気分になる。
どこか心がくすぐったい。
「明日までに車椅子を準備いたします。
アナタが使うものなので、オーダーメイドの最高級品を使いたいところですが、早急に準備するので、明日準備するものは既製品となります。いつか必ずオーダーメイドの最高級品の車椅子をご用意いたしますのでどうか許して頂きたいです」
「いや、既製品の車椅子で十分だよ。急なのにありがとね、セス」
「いえ。俺はステラ様の執事なので当然です。そしてアナタに必要な車椅子は既製品ではなく、オーダーメイドの最高級品です」
「いやいや。既製品でいいよ」
「…俺が納得いきません。アナタを取り巻く全てが特別でないとなりませんから」
「あはは。大袈裟だよ。それだとここにあるもの全てがそうでなければならないんだよ?」
大真面目にあり得ないことを言うセスがおかしくてつい笑ってしまう。
冷静沈着真面目なセスでも冗談を言うんだな、と思ってセスを何となく見ると、セスは不思議そうな顔で私を見ていた。
…何だか、嫌な予感がする。



