「帰る?」
私の言葉を聞いたユリウスは冷たい表情のままどこかおかしそうにそう呟く。
「お前を保護した時、お前の素性を調べなかったとでも?少なくともこの帝都にはお前の家はないだろう。ステラ」
「…」
「12歳ほどの栗色の髪と緑の瞳。どこにでもいる子どもの特徴だな。そんな子どものステラという名の行方不明者はここ帝都にはいなかった。戸籍ももちろんなかった。どういう意味かわかるか?」
私はリタ・ルードヴィングの代役だ。
孤児院からルードヴィング伯爵に引き取られた時に私の戸籍がどうなったのか知らない。
ユリウスが探しても見つからなかったということはルードヴィング伯爵が私の戸籍を隠したか、あるいは消したかの2択だろう。
「…事情があるのだろう?お前のような子どもを完治もしていないうちから外に出すと思うか?」
「…」
何も言えない私にユリウスはただ淡々と自身が調べ上げた事実を口にする。
家のない訳ありの子どもを今のユリウスはきっと放っておけないのだろう。



