悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





セスを安心させ、精神状態を安定させる。
そこまでできたのなら次に必要なのはそのセスからの信頼と信頼から得られる自由だ。
その自由の最終目標はもちろん屋敷外へと出て、帝国外へと逃げることだ。
だが、いくらセスを安定させたからといって、すぐにセスは私を自由にはしないだろう。
きっと今の状態で屋敷から出して欲しいと主張しても、その主張は通らないはずだ。

だから私は考えた。
ならば少しずつ私の行動範囲を広げ、セスが安心できる範囲を広げていけばいいと。

最初はこの部屋から出られるようにする。
それからこの屋敷、この屋敷の庭、最後にはセスの手の中から。
そして帝国外へと逃げるのだ。

セスの返事を緊張しながらも待っていると、セスは何やら難しい顔をして口を開いた。



「…そうですよね。ステラ様はもうずっとこの部屋から出ていませんからね…」



セスが空色の瞳を伏せ、何やら思案し始める。

少し前のセスならここで仄暗い笑みを浮かべ、私の意見なんて断固拒否の姿勢を見せていたが、少しだけでもこちらに譲歩するつもりがあるらしい。

…いける。
セスは私を信頼し始めている。