「ふふ」
「…?何を笑っている?」
「別にぃ」
リタといつも対峙しているユリウスとのギャップにちょっと笑っているとユリウスはそんな私を不思議そうに見つめていた。
言ってもわからないだろうから言わない。
リタとして対峙している時は冷たい印象のある無愛想な人、と思っていたが、ステラとして関わるユリウスはどこか人間味があり、面白かった。
ここでの時間はリタだった時とは違い、穏やかで幸せなものだ。
ずっとリタの代役として気を張らなくてもいいし、優秀である為に無理に努力をしなくてもいい。
怪我の治療中とはいえ、ずっとゆっくりとした時間が流れている。
契約終了後はこんな生活を夢見ていたはずなのに何がどうなってこんなことになってしまったのか。
今では命を狙われているなんて。
まだまだ傷は治っていないが、ここに長居することは危険だ。
「ユリウス」
私は食事をしていた手を止め、フォークを置くとユリウスをまっすぐ見つめた。
そんな私を見てユリウスも食事の手を止める。
「今までお世話になりました。もう動けるようになったし家に帰るよ。ここでの恩はいつか必ず返すから」
そして私はユリウスに心から感謝して頭を下げた。
帰る家などないが、そう言った方がユリウスも私をここから送り出しやすいだろう。



