「別にこのくらい…。ニセモノのリタお嬢様のおかげで人類がまだ関与することさえもできなかった時間に関する研究ができた訳だし。それのお礼だよ」
愛想のない表情でぶっきらぼうにそう言うキースを見て、私は笑う。
まるでお礼を言われている気がしない表情だが、あのキースが人にお礼を言う時点で凄すぎるし、何よりあれがキースの精一杯のお礼だとわかるので、全く気にはならない。むしろ微笑ましい。
「あとこれ。もう大丈夫だと思うけど一応ね。君、いろいろと危険に晒されているし」
「?」
私にお礼を言った後、キースがずいっと右腕を伸ばし、私に何かを渡す。
不思議に思いながらも、私はそれを受け取り、確認すると、それは紫の液体が入った薄い縦丸の小さな容器を黒の紐でネックレスにしたものだった。
「これは?」
小さな容器の中でゆらゆらと揺れる紫の液体を見つめながら、私はキースにこの液体の正体を聞いてみる。
キースから渡されたものなので、魔法薬なのだろうとは思うが、何の魔法薬なのかはわからない。



