「キース。本当に一ヶ月間お世話になりました。キースのおかげで無事生きて帝国を出られそうだよ」
玄関先で朝日を浴びながら私を見送るキースに私はここ一ヶ月分の感謝の気持ちを込めてキースに頭を下げる。
キースのおかげで体も問題なく元に戻り、帝国外へと無事に逃げられる準備も整った。
帝国外へ出るには必ず国境にある検問所を通らなければならない。
検問所を通る為にはいろいろと書類が必要なのだが、その中には自身が自身であると証明する書類も必要だった。
私には戸籍がない。本来、戸籍のない人間は帝国外には出られない。
なので私は自身の財産の半分を使ってでも旅人や行商人に報酬を渡し、荷物として、または身分や戸籍を偽って帝国外へと出ようとしていた。
だが、その偽りの身分と戸籍を何とキースが作り、用意してくれていたのだ。
『このくらいないと安全には外に出られないでしょ?』
と、何でもないように偽りの必要な書類を全部渡された時は本当に驚いたものだ。
まさかあのキースが誰かの為に動くことができるなんて。



