「ユリウス様は…」
「ユリウスだ。様はいらない」
「しかし私は平民で…」
「何度も言わせるな。平民以前にお前は子どもだろう。子どもが大人に気を使うな。敬語もいらない」
「…はぁ」
美しい所作で次々と運ばれる食事を口に入れるこの男は無表情のまま無茶を言う。
平民が貴族相手に気を使わないわけがないだろう。貴族は平民より上の者なのだから。しかもユリウスは公爵家の者だ。
…しかしユリウスが言いたいこともわかってしまう自分がいる。
私くらいの平民の子どもが大人のような対応をしていたら変な気持ちにもなるだろう。
街にいる平民の子どもたちは無邪気な子どもが多いのだから。
こうだと決めたユリウスは梃子でも動かない。
なので私は仕方なく、ユリウスの要望に今日も応えることにした。
「ユリウスは今日は何をしていたの」
「今日か」
嫌々ながらユリウスの要望に応えた私を見て、少しだけ嬉しそうにユリウスが目を細める。
ここへ来てわかったがユリウスは無表情だが、喜怒哀楽を案外目で語ってくる。
よく見ればだが、ユリウスの感情を私はなんとなくわかるようになっていた。
ポイントは目だ。目を見ればわかる。



