あらゆる方法でリタの代役だったことを証明するつもりではいたが、その必要もないらしい。何だか拍子抜けだ。
「…わかるよ。あの程度の魔法薬なんて僕には無意味だからね。帝国一の魔法使いなんだよ、僕は」
皮肉げに笑うキースを見て、改めてキースの有能さに感心する。
やはり帝国一の魔法使いという名は伊達ではないようだ。
原理はよくわからないが、最初からキースは私が魔法薬でリタに化けていたことに気がついていたみたいだ。
「ここは僕の魔法によって隠された場所だから安全だよ。僕の許可なく、ここへ立ち入ることは誰にもできない。だから安心して休めばいいよ」
先ほどの不気味な笑顔を早々にやめ、キースが淡々と私に今の状況を説明する。
「それでニセモノのリタお嬢様は…いや、ずっとこの呼び方は面倒くさいね。君、名前は?」
「…ステラ」
「…ステラ、ね。それじゃあステラは…」
「…っ!ぅゔっ」
キースが何か話し始めたところであの苦しさが私を襲う。
このまま横になっていては、血が気管に詰まってしまうので、私は自身の体に鞭打って、体を何とか起こすと、吐血する態勢に入った。



