「体調は大丈夫ですか!?アナタの傷はまだ塞がっておりません!やはりこのメアリーがお着替えをお手伝いいたします!」
上品なメイド服に身を包み、赤茶の髪を綺麗に一つにまとめているリタたちと同世代に見える少女、メアリーがこちらに早足でやって来て深緑の瞳で私を上から下までくまなく見る。
メアリーの瞳にはきちんとこの後の予定の為に着替え終えたワンピース姿の私が写っていることだろう。
メアリーは私をじっくり見た後、「あら?ご自分で着替えられたのですか?」と不思議そうにそしてどこか残念そうに肩を落としていた。
本当はメアリーが私にワンピースを着させたかったのだ。
先ほどまで何度も「私にお着替えをお手伝いさせてください!お願いします!ねえ!お願いですからぁあ!!!」と訴えられたが、私はそれを丁重にお断りしてメアリーには部屋の外に出てもらっていた。
廊下に出る時のメアリーはとても不服そうだったが、私はそれを無視した。
このくらいの着替えくらい自分でできる。怪我をしているとはいえ、そこまでお世話されなくても大丈夫だ。
メアリーは世話好きのメイドで、事あるごとに私の世話を焼こうとして大変だった。
私はこれでももう19歳なのだ。しかも貴族のお嬢様ならまだしも平民のだ。
過剰な世話は不要である。
今日は学院から帰ってきたエイダンと晩御飯を共にする予定がある。
もうすぐ予定の時間だ。
「それでは参りましょう!ステラ様!」
「うん」
私はメアリーに案内されて今日も公爵家の食堂へ向かった。



