「な、何で…」
突然のことに驚いて上手く言葉を発せられない。
まさかこんなところでロイに会うとは夢にも思わなかった。
「僕はちょっと仕事でね?ステラこそ何でこんなところにいるのかな?ユリウスがどれだけ君を探していることか」
「…ちょっと気分転換にプチ旅行に来ています」
「へぇ」
相変わらず余裕のある美しい笑みを浮かべるロイに私は苦し紛れに嘘をつく。
そんな私にロイの何を思っているのかわからない視線がグサグサと刺さり、思わず視線を逸らしてしまった。
あの顔は絶対に私の嘘に気がついている顔だ。
「プチ旅行ねぇ?こんなに大騒ぎになっているのにどこがプチ旅行なのかな?」
探るようにロイのルビー色の瞳が私を捉える。
笑っているロイだが、その瞳は真剣だ。
…そう、ロイの言う通り、私の逃走はフランドル公爵家を揺るがすとんでもない大騒ぎになっていた。
何故、私が離れているはずのフランドル公爵家の様子を知っているのかというと、ここに来るまでにあちこちで「フランドルがある少女を血眼になって探している」という話を聞いていたからだ。
しかも似顔絵付きの私を探す紙まで作っており、それを私はもう何度も何度もいろいろなところで見てきた。



