悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜






「ああ、この格好じゃあわからないよね。ちょっといいかな?」

「え」



青年が私の返事なんて待たずに、私の手を引き、人気のない路地へと向かう。

ふ、不審者?でも帝国騎士団が悪さなんてする?しかもこんな堂々と騎士団の制服を着て。

不安に思っている私なんてよそに青年は路地の奥へと移動し終えると、辺りをキョロキョロと確認し始めた。
そしてそれを終えると自身の首にあるシンプルなデザインのネックレスに手を伸ばした。



「僕だよ、ステラ」



ネックレスが外されたと同時に目の前の青年の姿がロイへと変わる。
いや、変わったのではない。元からロイだったのだ。
ロイが今外したネックレスには認識齟齬の魔法がかけられていたのだろう。
その為、騎士団の青年が実は皇太子のロイであると気づけなかったのだ。