そして休日明け。ブライダル業界は、一般的に火曜定休が多いのだが、ホテルの一部門である彩の職場に定休日はない。


土日祝日に比べれば、平日のウェディングプランナ-の時間は、ゆったりと流れる。10時出勤の彩は、サロンの清掃や朝礼を経て、まずはパソコンに取り付く。


平日は来場者は少ないが、その分、担当しているお客様から問い合わせなどのメールが、夜間に入っていることが多い。まして、昨日が休みだったので、待たせてしまっている可能性も高い。目を通し、対応が必要なものについては、出来るだけ早く返信する。


それが終わると、上司や同僚とのミーティング。情報共有、ブライダルフェアの企画、週末の式に向けての、他部門との打ち合わせもある。


昼食を挟んで、引き続き、打ち合わせや式で使用する備品の発注などをこなすが、平日と言えども挙式予定者との打ち合わせや、新規の問い合わせといった来場者が全く0ということはない。それらの対応は、当然怠ることは出来ない。


そうこうしているうちに、19時の定時に。平日の残業はなるべくしないようにとは、上司からも言われているし、土日祝日の長時間労働を調整する為の、フレックスが認められている日もある。


この日は、彩も定時で退勤。休日よりは、むしろこれからの時間の方がプライベ-トを楽しむことが多い。同僚と飲みに入ったり、ショッピングを楽しんだり、時にはエステに通ったり。


そしてこの日は、高校時代からの親友、香田遥(こうだはるか)との食事の約束が出来ていた。高校時代、共に弓道部で汗を流し、3年生の時は彩が主将、遥が副将として部を率いたふたり。卒業後、学校こそ違っていたが、共に大学進学の為に上京した後も、交流を続け、大学卒業後は、彩同様に遥も故郷には帰らずに保険会社に就職し、事務を担当していた。


「彩、少し痩せた?」


「そうかな?」


「うん、相変わらず仕事忙しいの?」


「まぁね。お陰で、弓も全然引きに行ってない。」


そう言って、苦笑いする彩。大学時代は、都会での娘の1人暮らしを案ずる親に言われ、女子専用の学生向けマンションで暮らしていた彩は、卒業、就職に当たって、新居を探す時に通勤の利便さともう1つ、近くに弓道場がある場所をというあまり普通の人が考慮しない条件で探して苦労した。競技は卒業と共に引退するけど、趣味としての弓道はずっと続けていきたいという考えからだったが、結局今となっては無駄になってしまった形だ。


「体調、大丈夫?」


「身体が頑丈なのだけが、取柄ですから。」


「よし。じゃ、今日はいっぱい食べて、いっぱいおしゃべりしちゃおう。」


「OK!」


そんなことを言い合うと、2人は楽しそうに歩き出した。