ホテリエである彩は休日が交代制で不規則。特にウェディングプランナ-になってからは、土日祝日の休みは、ほぼ望めない環境になってしまった。


だから遊びに行こうにも、平日休みでは学生時代の友人とも時間が合わなくなり、結局、出掛けるのも1人なんてことが多くなってしまう。更に仕事の疲れがたまる週末明けの休日は、今日のように起きるとほぼ午前中が終わってしまっているようなことがいつの間にか常態化するようになっていた。


(結局、今日もグダグダしてるうちに1日が終わっちゃうんだろうな、きっと・・・。)


そんな予感と共にベッドから降りた彩は、、ノロノロとブランチを摂り、洗濯、掃除と溜まりがちの家事をこなしていると、あっという間に夕方に。


そこから出掛けようとしても、明日の仕事のことを考えると、つい億劫になって、結局せいぜい近くのスーパ-に買い出しに出るのが関の山。そして、ひとり夕飯の準備をして、食べて、片付けて・・・こんな感じで休日は過ぎて行ってしまう。20代半ばの女子が、こんなことじゃいけないと思いながらも結局、同じことが繰り返される羽目となり


(華やかなイメ-ジに包まれた、ウェディングプランナ-さんの私生活の実態は、こんなものでございます・・・。)


思わずそう自嘲しながら、食卓の椅子に腰かけようとすると、ふと1枚の写真が目に止まった。袴姿の10人程の男女がトレ-ナ-姿の男性と共に笑顔で納まっているこの写真が撮られた時、彩は高校3年生。引退試合となったインタ-ハイ県予選を終え、学校に戻った後、その日の出場メンバ-が、顧問の教師を囲んで、校内花壇の前で撮ったものだった。


(もう、8年前になるのか・・・。)


彩は学生時代、弓道部に所属していた。決して純粋な気持ちで、その門を叩いたわけではなかったのに、気が付けば高校そして大学の7年間、彩の生活は間違いなく弓道を中心に回っていた。


咲き乱れるアジサイをバックに、後輩がスマホで撮ってくれたこの写真はその後、まずは実家の自分の部屋に飾られ、以来2度の引っ越しを経た今日まで、ずっと彩の部屋の一隅を占めている。正直、毎日、しみじみと眺めてるわけではないが、折に触れては、いろいろな思いを馳せる・・・彩にとっては大切な一枚だった。


自分でもびっくりするくらいに弓道にはまってしまった彩。そんな7年間の自分の競技生活の中で、高校最後のインハイ予選は、間違いなく1つのハイライトであり、そして


(アイツ、頑張ってるかな・・・?)


本来なら、この写真に納まるべきだったのに、姿のないひとりの人物を彩に思い出させることになるのだった。