GWを迎え、相変わらず慌ただしい日々を送っている彩のもとに、遥から連絡が入ったのは、GW合間の平日の休日に、家で彼女がまったりしていた時だった。


『ごめんね。ホテルに連絡入れたら、今日はお休みだって聞いたから。』


「そっか。遥は今日はお休みなの?」


『ううん。今、昼休みなんだけど、ちょっと話したいことが出来ちゃって。急で悪いんだけど、今夜私が仕事終わった後、会えないかな?』


遥がお伺いを立てるように聞いて来る。


「私は全然大丈夫だよ。遥は今日は仕事、何時に終わりそうなの?」


『今日はたぶん定時で上がれると思う。』


「じゃ、そのくらいに前に遥の会社の近くのカフェで待ってるよ。」


『いいの?せっかくのお休みの日に悪いね。』


「遥と会うんだから、お休みも何も関係ないよ。」


『ありがとう。じゃ、後ほど。』


こうして通話を終えた後


(どうしたんだろう、遥。なんか、重大なことでも起こったのかな・・・?)


心が騒ぐものを感じながら、外出の準備に取り掛かった彩が、待ち合わせ場所で親友と向き合ったのは、それから5時間ほど経った頃だった。


注文を終え


「それで一体どうしたの?」


と切り出した彩に対して、一瞬躊躇ったような表情を見せた遥は


「今度さ、彩のホテル、見学に行ってもいいかな?」


と少し照れ臭そうに尋ねて来た。一瞬、虚をつかれた感じで固まった彩だが、すぐに


「えっ、それってつまりそういうこと?」


と問い返すと


「う、うん・・・。」


小さく頷く遥。


「そっか、とうとう決めたんだぁ。」


彩は満面の笑みになる。


「うん。実は浩人に転勤の話が出てるんだ。転勤がいずれあるのは、わかってたから、私もその時は付いて行こうって、前から決めてたんだけど、いよいよ本決まりになりそうで。それで、いいきっかけだからっていうのもあって。」


遥は恥ずかしそうに答える。町田(まちだ)浩人は、やはりかつての弓道部の仲間で、遥の恋人であり、現在はこちらで就職して、不動産会社に勤めている。


「そうなんだ。それにしても本当に良かった。遥、おめでとう。」


「ありがとう。でも、まだ不確定要素があってさ。」


「不確定要素?」


おめでたい話に似つかわしくない言葉が、遥の口から出て、彩は問い返す。