「お前、めげねぇ奴だな。」
ある日、秀にそう呆れ顔で言われたが
「めげるなんてとんでもない。あの人がそんな簡単に振り向いてくれるなんて、最初から思ってねぇからな。」
そう意気軒高に答える尚輝。しかし、尚輝が彩に絡んでいる場面を秀自身、何度か目撃しているが、彩の反応は塩対応という他なく、回を追うにつれ、つれなさが増しているのがはっきり見て取れる。
(俺の心配してる通りになってんじゃねぇか。人間、諦めが肝心って言葉があるけど、今の尚輝にはまだ何を言っても、無駄みたいだしな・・・。)
高校に入って、一番に出来た友人を、秀が心配しながら見ているうちに、GWが過ぎ、中間考査が過ぎ、6月の声を聞こうかという季節になった。
彩も言っていた通り、高校の弓道部員は、ほぼ初心者で占められる。尚輝を含む12名の今年の1年生も、経験者は1人もいない。従って、格好もまだ、袴や道着ではなくジャージを身に着け、筋トレや基礎練習に明け暮れていた。
もっとも筋トレと言っても、そんなハ-ドなものではなかった。
「基礎体力は必要だが、弓は筋肉じゃなくて骨で引くもんだ。それに弓を引くのに必要な筋肉は、弓で引くことでしか、鍛えられんからな。」
児玉顧問は、そんなことを言っていた。「骨で引く」の意味が分からなかったし、じゃ、この筋トレ、何の意味があるんだよ、と尚輝は内心で悪態をついていた。
更に苦痛だったのが基礎練習だ。「看取り稽古」と呼ばれる先輩達の所作の観察は、彩に熱い視線を心置きなく送れる時間で
(やっぱり彩先輩は、綺麗で凛々しくて・・・最高だよ。)
なんて悦に入っていたが、弓道の基本動作「射法八節」をマスタ-するための「徒手練」、野球のバッタ-で言えば、素振りに当たる弓を引き動作を繰り返す「素引き」などの地味な練習をひたすら繰り返す日々。
「言うまでもないが、弓は凶器だ。中途半端な状態で持たせるわけにはいかない。」
という児玉の言葉は理解できるが、それにしても、この練習をひたすら夏休み前まで繰り返させられることは、さすがに苦痛に感じて来ていた。
更に先輩達を見ていると、この基礎練習を卒業しても、あとは黙々と1人弓を引く練習に、多くの時間が費やされている。
(なんなんだよ、この部活は・・・。)
尚輝は内心、嘆いていた。
ある日、秀にそう呆れ顔で言われたが
「めげるなんてとんでもない。あの人がそんな簡単に振り向いてくれるなんて、最初から思ってねぇからな。」
そう意気軒高に答える尚輝。しかし、尚輝が彩に絡んでいる場面を秀自身、何度か目撃しているが、彩の反応は塩対応という他なく、回を追うにつれ、つれなさが増しているのがはっきり見て取れる。
(俺の心配してる通りになってんじゃねぇか。人間、諦めが肝心って言葉があるけど、今の尚輝にはまだ何を言っても、無駄みたいだしな・・・。)
高校に入って、一番に出来た友人を、秀が心配しながら見ているうちに、GWが過ぎ、中間考査が過ぎ、6月の声を聞こうかという季節になった。
彩も言っていた通り、高校の弓道部員は、ほぼ初心者で占められる。尚輝を含む12名の今年の1年生も、経験者は1人もいない。従って、格好もまだ、袴や道着ではなくジャージを身に着け、筋トレや基礎練習に明け暮れていた。
もっとも筋トレと言っても、そんなハ-ドなものではなかった。
「基礎体力は必要だが、弓は筋肉じゃなくて骨で引くもんだ。それに弓を引くのに必要な筋肉は、弓で引くことでしか、鍛えられんからな。」
児玉顧問は、そんなことを言っていた。「骨で引く」の意味が分からなかったし、じゃ、この筋トレ、何の意味があるんだよ、と尚輝は内心で悪態をついていた。
更に苦痛だったのが基礎練習だ。「看取り稽古」と呼ばれる先輩達の所作の観察は、彩に熱い視線を心置きなく送れる時間で
(やっぱり彩先輩は、綺麗で凛々しくて・・・最高だよ。)
なんて悦に入っていたが、弓道の基本動作「射法八節」をマスタ-するための「徒手練」、野球のバッタ-で言えば、素振りに当たる弓を引き動作を繰り返す「素引き」などの地味な練習をひたすら繰り返す日々。
「言うまでもないが、弓は凶器だ。中途半端な状態で持たせるわけにはいかない。」
という児玉の言葉は理解できるが、それにしても、この練習をひたすら夏休み前まで繰り返させられることは、さすがに苦痛に感じて来ていた。
更に先輩達を見ていると、この基礎練習を卒業しても、あとは黙々と1人弓を引く練習に、多くの時間が費やされている。
(なんなんだよ、この部活は・・・。)
尚輝は内心、嘆いていた。


