Far away    ~遥かなる想い~

出鼻をくじかれたような形になったが、そのあとは順調に時は過ぎて行った。


ウェディングドレスを纏った麻美は


(綺麗・・・。)


傍で見ていた彩が、思わず息を呑むくらいに美しかったし、式が始まり、誓いの言葉を述べたあと、指輪を交換し、唇を重ね合った2人を見て


(大地さん、麻美さん。おめでとう。)


彩は心からの祝福を贈った。


その後の披露宴も、つつがなく進行して行き、新郎の大学時代の友人たちの出し物も、斗真不在の影響も見られずに盛り上がっていた。


前日の言葉通りに、顔を出した優姫にも


「新郎さんも新婦さんもいいお顔されてる。いいお式の証拠だよ。」


と言ってもらった。


そしていよいよフィナーレへ。


両親への感謝の思いを綴った手紙を読み上げた麻美の目に涙はなく、輝くばかりの笑顔。


親族代表の父親の挨拶に続いて、マイクを手にした大地は、列席者への感謝の意を述べ、そしてこれから2人力を合わせて、幸せな家庭を築いて行く決意を力強く述べた。


その姿は凛々しく、そして頼もしく、彩の目にも映った。


全ての式次第が終了した。新郎新婦とその両親は、ゲストを見送る為に移動を開始する。


花嫁の介添役を他のスタッフに委ね、彩は一足先に会場出口に急ぐ。


そして、新郎新婦達が所定の位置に着いたのを見計らって、合図を送る。それを受けて、司会者が閉宴を告げ、会場には新郎の選曲のクロージングソング「ゴーウェスト」が流れる。


それに促されるように、1人また1人とゲストが席を立つ。そしてスタッフの案内に従って、出口に向かい、待ち受ける新郎新婦たちと握手を交わし、笑顔で別れを惜しむ。


クロージングの際の参列者の笑顔は、式の成否のバロメーター。かつて、先輩たちからそう教わり、またそれを実感して来た彩。そして今、彼女の目の前には、笑顔が溢れていた。


(よかった・・・。)


その光景は、ウェディングプランナーに喜びと安堵を与えてくれる。


全てのゲストが去り、宴は終わった。控室に戻る新郎新婦に付き添い、歩を進める彩に、そっと大地が近付いたかと思うと


「彩、ありがとう。」


小さな声で、そう告げた。息を呑んだように立ち止まった彩にチラッと笑みを送ると、すぐに彼女を離れ、大地は麻美に並んで行く。


再会して今日まで、2人で話したあの時を除いて、大地が「彩」と呼び掛けて来たことはない。もちろん、彩も彼を「瀬戸様」と呼び、1人のお客様として、接して来た。


だけど今・・・。


思わず溢れそうになった涙を隠すように、大地の後ろ姿に一礼すると、彩はプランナーに戻って、2人を追った。