卒業式から、ほぼ1ヶ月。颯天高は、新年度を迎えた。彩や遥は、いよいよ最高学年となり、高校生活最後の1年を迎えていた。


「でも、今年も一緒のクラスでよかったね。」


新クラスの顔合わせが終わり、教室を出ながら、遥が嬉しそうに彩に話し掛ける。


「そうだね。遥、改めて、よろしくね。」


「こちらこそ。」


そんなことをしゃべりながら、2人は肩を並べて、更衣室へ。始業式のこの日は、授業はないが、部活は、当たり前のように今日もある。


「でもさ、高校生活もあと1年かぁ、なんて思うけど、インハイ予選は6月だから。あと2ヶ月しかないよ。」


「うん、そう考えるとあっという間だ。」


着換えながら、そんなことを話す2人。先日弓道部は春の地区大会を戦った。


全県を3ブロックに分けて開催される地区大会。南部ブロックに出場した颯天高は、出場したチ-ム、個人共に、全て予選突破を果たし、彩は個人3位入賞を果たした。8月に行われる高校スポ-ツの最高峰、インタ-ハイ出場に向けて、弾みを付けた形だが、インハイ出場は正直、狭き門。大部分の3年生が、6月の県予選で、事実上のピリオドを打つことになる。


颯天高から、個人、団体含め、インハイ出場を果たした選手はまだいない。県内の強豪校の壁は、はっきり言って厚い。


「でも彩は・・・可能性あるよね。」


「もちろんそのつもり。個人だけじゃない、団体だって、私は戦えると思ってる。今までとは違って、遥と一緒のチ-ムでやれるんだから。」


「彩・・・。」


「よろしくね。」


「うん。」


力強くそう言った彩に、遥もコクンと頷いていた。


弓道場に入ると


「主将、香田、出来たぞ。」


と町田が、2人を手招きする。颯天高は、明日が入学式。新入生を迎えるに当たり、部員募集の校内掲示ポスタ-が完成したと言うのだ。


「どれどれ。」


覗き込んだ2人は


「いいじゃない。」


「かっこいいし、これなら、絶対に新入生の目を引くよ。」


と口々に明るい声を出す。


「尚輝の力作だよ。」


「そうか、やるじゃん、あんた。」


「えっへへ・・・。」


彩に褒められて、尚輝は相好を崩した。