それからひと月ほどが過ぎた。この日の颯天高は、いつもと違う雰囲気に包まれていた。いや、たぶん全国津々浦々の高校が、同じような状況だったかもしれない。
この日は、セントバレンタインデー。女子が恋愛において、圧倒的に受け身だった時代、バレンタインは女子から堂々と告白できる、唯一の日だった。
しかし、時は流れ、人々の価値観も恋愛観も変わり、そのイベント性はかなり薄れたと言われているが、その一方で、やはりこの日を心に秘めた思いを伝える日と思い定める人が、全くいなくなったわけではない。授業の合間に、放課後に、やはり様々なドラマが、展開されていたのである。
ただ、かつてと様変わりしたことの1つに、その思いを伝えようとするのが、女子からだけでは、決してなくなったことだった。
「俺は先輩が・・・好きなんです。」
部活の為に、遥と一緒に更衣室に向かっていた彩を、待ち構えていた尚輝が部室裏にやや強引に、連れて行くと、こう切り出した。今更ながら、驚いた表情で自分を見つめる彩に
「俺と付き合って下さい。よろしくお願いします。」
そう言った尚輝は、チョコの包みを差し出し、深々と頭を下げた。
「あんた・・・私のこと、諦めたんじゃないの?」
そう聞いた彩に
「どうして?」
と答える尚輝。
「だって・・・ここのところ、ずっと私に近寄って来なかったじゃない。」
「寂しかったですか?」
そう言って、ニヤッと笑った尚輝に
「バ、バカ。自惚れてんじゃないよ。」
つっけんどんにそう答えたものの、彩ははっきり動揺していた。
「今日を・・・待ってたんです。」
そう言って、まっすぐ自分を見る尚輝を、息を呑んで見つめてしまう彩。そして流れる沈黙・・・。
「そのチョコ、尚輝が作ったの?」
その沈黙を破るように、彩は尋ねる。
「はい。初めてだから、上手く出来てるかどうか、わかんないですけど。」
そう答えた尚輝の表情は、真剣そのものだった。
この日は、セントバレンタインデー。女子が恋愛において、圧倒的に受け身だった時代、バレンタインは女子から堂々と告白できる、唯一の日だった。
しかし、時は流れ、人々の価値観も恋愛観も変わり、そのイベント性はかなり薄れたと言われているが、その一方で、やはりこの日を心に秘めた思いを伝える日と思い定める人が、全くいなくなったわけではない。授業の合間に、放課後に、やはり様々なドラマが、展開されていたのである。
ただ、かつてと様変わりしたことの1つに、その思いを伝えようとするのが、女子からだけでは、決してなくなったことだった。
「俺は先輩が・・・好きなんです。」
部活の為に、遥と一緒に更衣室に向かっていた彩を、待ち構えていた尚輝が部室裏にやや強引に、連れて行くと、こう切り出した。今更ながら、驚いた表情で自分を見つめる彩に
「俺と付き合って下さい。よろしくお願いします。」
そう言った尚輝は、チョコの包みを差し出し、深々と頭を下げた。
「あんた・・・私のこと、諦めたんじゃないの?」
そう聞いた彩に
「どうして?」
と答える尚輝。
「だって・・・ここのところ、ずっと私に近寄って来なかったじゃない。」
「寂しかったですか?」
そう言って、ニヤッと笑った尚輝に
「バ、バカ。自惚れてんじゃないよ。」
つっけんどんにそう答えたものの、彩ははっきり動揺していた。
「今日を・・・待ってたんです。」
そう言って、まっすぐ自分を見る尚輝を、息を呑んで見つめてしまう彩。そして流れる沈黙・・・。
「そのチョコ、尚輝が作ったの?」
その沈黙を破るように、彩は尋ねる。
「はい。初めてだから、上手く出来てるかどうか、わかんないですけど。」
そう答えた尚輝の表情は、真剣そのものだった。


