白雪姫の王子様

次は、

〈フードコート〉

本当は、普通の店へ入った方がいいんじゃないかとも思った。

でも、雪はフードコートがいいと言った。

「こんなにいっぱいあると、迷っちゃうね」

嬉しそうに笑う雪。

きょろきょろと店を見回している。

その姿から、ワクワクしているのが伝わってきた。

「俺ラーメン!」

翔は即座にラーメン屋へ走っていく。

「私はクレープ!」

莉子もクレープ屋へ向かった。

残された俺と雪は、先に席を取って待つことにした。

「雪は何食べたい?」

一応、兄貴から食事制限については聞いてある。

雪も、自分で分かっているはずだ。

でも、雪は少し考えてから、逆に聞いてきた。

「蓮くんは?」

突然聞かれて、少し驚く。

「俺は雪に合わせる」

そう言うと、雪は少し困ったように笑った。

「私……」

そして、小さな声で言った。

「みんなが食べてるの見てるだけで、お腹いっぱいかも」

その瞬間、体が強張る。

……無理させた?

体調悪いのか?

やっぱり外出なんてしないほうが良かったのか?

今すぐ帰った方がいいんじゃ――

色んな考えが、一気に頭の中を駆け巡る。

もし、ここで雪に何かあったら。

もし――

「蓮くん……」

遠くで声が聞こえる。

「蓮くん!」

雪の声で、ようやく我に返った。

「私は大丈夫だよ」

雪は優しく笑っていた。

「全部美味しそうで、選べないだけ」

その笑顔を見て、少しだけ肩の力が抜ける。

「二人ともまだ決めてねぇの?」

翔が、大盛りのラーメンを持って戻ってきた。

「私、見てるだけで楽しくて」

「なんだそれ」

雪と翔が笑い合う。

その姿を見て、少し安心した。

「蓮も早く買ってきな〜」

気づけば、クレープを持った莉子も戻ってきていた。

「ああ」

席を立つ。

でも、頭の中から、さっきの雪の言葉が離れない。

不安を抱えたまま、
適当にハンバーガーとポテトを選んだ。

席へ戻る。

「蓮、そんな体に悪そうなの食うの?」

ラーメンを頬張りながら、翔が言う。

「お前も似たようなもんだろ」

そう返しながら席へ座る。

俺たち三人が食べているのを、
雪は楽しそうに見ていた。

その顔は、ちゃんと楽しそうなのに。

どうしても、不安が消えなかった。

ハンバーガーも、ポテトも、
何を食べても味がしなかった。