【全8話完結】ラブレターの主を探せ!

掴まったらマズイ!
 直感でそう察し、私は逃走経路を頭の中で一瞬で思い描いた。

「話は終わったでしょ、だって、今ので!」
「まだだ!」

 何を。これ以上何をあいつから聞かされるというのだろうか。考えただけでも恐ろしい、羞恥(しゅうち)に耐え切れそうにない。私は角を曲がったところで、さっと棚の裏に隠れる。細い棚の後ろにスペースがあって隠れられるなんて想定外だろう。この先は通路が3つにわかれているので、どちらに逃げたか迷うはずだ。夏井はいったん足を止め、きょろきょろと探している姿が見えた。後ろを振り返られたら見つかってしまうかもしれない、と焦り少しでも隠れれるように棚の奥へと移動した。

 やがて夏井が通り過ぎる足音が遠くなっていく。乱れた髪の毛を整えつつ、息を整えた。危なかった、気を抜いたら本当に追い付かれるところだった。

 棚の裏に貼られた鏡の中の私の顔は完全に真っ赤で、これはたぶん走ったせい。きっとそう。危うく、ぐらりときちゃっ……違う。あんなほぼストーカーの告白ちっくに見えて、そうでないものに浮ついてないで落ち着け私。

 小一時間ほど待った放課後。
 誰もいないことを見計らって、ようやく靴箱へとたどり着く。
 特に夏井にだけは――今は絶対に会いたくない。
 
 今日は色んなことがありすぎた、とにかく帰ろう。
 全てから逃げるように、取り急ぎ靴箱をパカッと開く。

 はらはらと下に舞い落ちたのは――
 ラブレター……のように思える挑戦状!? 
 それも、何枚もある!?

「絶対に逃がさないからな、柳瀬」
「お前のいう『好きな女がいる男』になった。俺に会いに来い」
「柳瀬様 月が綺麗ですね」
「こんにちは、さっきはありがとう。応援してくれて嬉しいよ。君のために、サッカーも恋愛も両立させるよう全力で頑張ろうと思ってる。実は来週、試合が――(略」

 こいつら……!
 どれもこれも差出人名はないが、今の私にはどれが誰だかわかる。
 全員に突き返してやるべく、私はラブレターもとい挑戦状を全てぐしゃりと握りしめた。