翌日、ホームルームの時間帯。
 ひっそりとカバンから取り出した手紙を調べることにした。

 真っ白な紙に丁寧な文字。黒いボールペンできちんと書かれている。
 まずはこの手紙に似た文字を書く人を探そう。
 
 筆跡から探し当てれば、難しくないはず……と思っていたけれども。男子の文字なのかな? と思うほど丁寧な文字。いや、”俺”って書いてあるから、字面通りなら男子なんだろうけども。
 
『探してください』もなにも、ヒントもないのに。
じゃあ――どこから?
字面から推測できるのは……?

 もともとラブレターがあった、靴箱だ。
 まてよ、そもそも、靴箱の名前は各自の手書きになっているワケだし。
 筆跡が似た人物を絞り込んでみればいいかもしれない。よし、これが最も効率的だと思う。

 私は手紙をピン、とはじいた。

 ほとんどの人物が帰った放課後、ひっそりと靴箱を一つ一つチェックする。
 さすがに全校生徒となると大変だと思ったが、男子生徒に限れば生徒の半分。

 それも、学年2クラスしかないので、男子勢60名ほどから絞り込むのは大した労力ではない。丁寧なりに文字の最後の部分、はらい方が長めになっている。昨今、タブレットやスマホが主流となっているわけだし、キレイに文字を書ける人物、というのは案外少ないのかもしれない。

 ゆえに放課後には最終候補を5人プラス1人に絞り込むことができた。すばやくピックアップできた自分自身に対して拍手を送りたい。

 リストを一瞥する。
 さあ、ここからが本題だ。

 石田学、中村翔太、小西涼介、高橋優斗――クラスメイトの立花大樹。
 あとはラベルシールで字面不明が1人、名前は夏井雪人。
 立花くん以外は、関わったことがない人物ばかり。唯一のクラスメイトの彼ですら、え? 話したっけという程度。しかも、思い出せる顔はぼんやりとだし。

 この中でも一番怪しいのはクラスメイトなんだけど……。ううん、なんかしたっけ、立花くんとやらに。そう思い立花くんの席を見ると不在なので、とりあえず他を当たろう。
 
 引き続き推理を進めていく。
 文字が似ている、というだけで本人が出したかどうかはわからない。
 最終的に『この差出人は俺だ』ってどうやって認めさせれば――?

 手紙を再びピンとはじき、できるかぎりを思案した。