村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

刃物は使っていないから危険ではないけれど、あまり手元を覗き込まれるとやりにくい。

「ワタシも餅の作り方を知りたいんだ。葵が作ったものは格別においしいから」

「それなら教えますから、今は離れて」
と、何度注意しても陽神は葵にベッタリくっついて離れない。

さっきからクロが陽神を警戒して威嚇しているけれど、それも全く効果がなかった。

「白無垢姿の葵も美しかったけれど、こうして餅を作っている葵もまた美しいな」

「な、なにを言ってるんですか!?」
餅を作っている姿が美しいだなんて、ちょっといいすぎだ。

それに、葵よりも美しい娘は村に何人もいる。
その子たちには信仰心が足りなかったから、自分が選ばれたのだと思っていた。

「はい、できましたよ」
割り箸に巻きつけて少し炙った餅は米の形状を少し残した状態でコンガリといい香りと漂わせている。

そこに甘辛くした味噌を塗って食べるのは葵流だ。