村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

すると陽神は「もう、別の式神を向かわせている。今頃村は大慌てで準備していることだろう」と、いたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。

「あ、あの、陽神さまは私が村で……」
そこまで言って言葉を切った。

せっかくここへ来て人々の罵倒から開放されたのに、思い出すことは酷だった。

葵は小さな池で泳いでいる鯉を見つめて黙り込んだ。
狭い世界しか知らない鯉たちは、その中で相手を傷つけたり誰かに傷つけられたりしていないだろうか。

逃げ道もなく、苦しくはないだろうか。
そんな風に考えていたとき、陽神がまだ指先でひし形を作った。

そして池の大きさを今までの何倍にも大きくしてしまった。

さっきまで身を寄せ合おうようにして泳いでいた鯉たちが一斉に自由に泳ぎ回る。

「これで鯉も自由になれただろう。葵、君がここに来て自由になったように」

その言葉に葵は泣いてしまいそうになり口元に手を当てた。