村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「それだけでいいのか? 他にも娯楽につながっている部屋はいくらでもあるのに」

陽神が残念そうに言うので葵はそれも丁寧に断った。

せっかく夏と春から元気をもらったのに、屋敷内の散策だけで疲れ果ててはもったいない。
「それはまずはここからかな」

陽神が最初に案内してくれたのは炊事場だった。
広い土間に竈があり、その上には鉄鍋が乗っている。

ここは葵が頻繁に出入りしそうな場所なので、念入りに確認しておくことにした。

立派な食器棚の中には高級そうな食器が入っていて、使うのをためらってしまいそうだ。

米びつの中にはたっぷりの米もあり、新鮮な山菜や川魚もある。

「さすがの神様ですね、これだけ食料があれば十分です」

言いながら少しだけ切ない気持ちになった。
村には葵以外にも食べられない子供たちがいる。

そんな中で贅沢な食事をしてもいいのかどうか、悩んでしまう。