村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「これが死後の世界? 視力がよくなったこと以外、全部同じみたい」

試しに店の方へ向かってみると、そこも葵にとって慣れた場所だった。

ただ、しっかり目が見えていることで少しだけ違和感がある程度。

「これってどういうことなのかしら?」
と、首をかしげたときだった。

客席に誰かが座っていたようで椅子をひいて立ち上がる音が聞こえた。

「いらっしゃいませ」
反射的に接客してしまってから、相手が黄金色に輝く着物を着ていることに気がついて絶句した。

この村で一番の庄屋さんが逆立ちしたって買えなさそうな着物だ。

その人はとても美しい男性で、腰まで伸ばした白髪が後ろで束ねられている。

立っているだけで息がとまるほどの美しさときらびやかさを持っている。

旅人?
いえ、それならもっと日焼けして色黒よね。

村人でこんな人がいれば忘れるはずもないし。