村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「前みたいに沢山のお餅を作ることはできないけど、これで満足してくれるかなぁ」

小さな餅をへらべったくして割り箸にくっつけていく。

最後に味噌で甘辛くすれば完成だけれど、その味噌はもうなかった。

「クロ、明日はお店をしめてお出かけだからね」
葵は明るい声でそう言ったのだった。

☆☆☆

陽神神社への石段はあいからわず険しく、段差がまばらで葵は何度もつまづいて膝を打った。

その度に石段を駆け上がるクロが足を止めて心配そうに振り向く。

「大丈夫よクロ。私ここの石段でつまづくのは慣れているの」

そう言ってまた一歩一歩登っていく。
ようやく神社の境内にたどり着くと、すぐにお餅を添えて手を合わせた。

「お願いします。もう1度私をお助けください。このままではクロも私も餓死してしまいます」

葵は自分の食べるのも我慢して陽神さまへのお供えを作り、1日に何度もお祈りするようになった。