そう考えるとまた涙が浮かんできて葵は手の中の巾着をギュッと握りしめた。
どうにか壁に手をついて立ち上がると、ロウソクで照らしながら巾着の中を確認した。
そこには心ばかりのもち米が入っていたのだった。
☆☆☆
店にぱったり客が来なくなって一月ほど経ったときのことだった。
今日も旅人たちは店に見向きもせずに通り過ぎていく。
少しばかり作っている餅は今日も売れずに葵とクロが食べることになりそうだ。
そう思っていたときのことだった。
「こんにちは」
よく日焼けした若い旅人が店の戸を開いたのだ。
しばらく客を相手にしていなかった葵は一瞬動きを止めて、それから慌てて客用の椅子から立ち上がると「い、いらっしゃいませ!」と、声を張り上げた。
嬉しさと緊張が一気に押し寄せてくる。
初めてひとりで店に立ったあの時の感情が蘇ってくる。
どうにか壁に手をついて立ち上がると、ロウソクで照らしながら巾着の中を確認した。
そこには心ばかりのもち米が入っていたのだった。
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店にぱったり客が来なくなって一月ほど経ったときのことだった。
今日も旅人たちは店に見向きもせずに通り過ぎていく。
少しばかり作っている餅は今日も売れずに葵とクロが食べることになりそうだ。
そう思っていたときのことだった。
「こんにちは」
よく日焼けした若い旅人が店の戸を開いたのだ。
しばらく客を相手にしていなかった葵は一瞬動きを止めて、それから慌てて客用の椅子から立ち上がると「い、いらっしゃいませ!」と、声を張り上げた。
嬉しさと緊張が一気に押し寄せてくる。
初めてひとりで店に立ったあの時の感情が蘇ってくる。



