村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

だから気がつけば店のための材料がなくなっているのだ。
「買い出しに行かないとね」

葵はクロを膝に乗せてつぶやく。
その顔からは生気が消えて、ただ朦朧と毎日を生きているだけのように見える。

それでも買い出しに行こうと少しでも思えるのは、この店をなくしたきうないという気持ちからだった。

でも、その気持ちがあってもなかなか外へ出ることができなかった。

外を歩けば罵倒され、石を投げられ、汚い言葉で誘惑される。

それがわかっていて平気で外へ出られる人なんて、きっといない。

結局、葵が重い腰を上げることができたのは外が十分暗くなってからだった。
ロウソクに火をともしてそれを燭台に乗せ、外へ出る。

さすがに人の姿はなくてホッと息を吐き出し、足早にもち米屋へと向かった。

こんな時間じゃどこのお店もしまっているけれど、女将さんならきっと店を開けてくれると信じて。