村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

まだ陽が高いうちに小さな風呂にお湯を張って身を清めていると、格子窓の外から人の声が聞こえてきた。

男が数人で歩いているようで、どんどん近づいてくる。
今来られても店は閉めてしまっているのに。

そう思っていると足音は風呂場の方へと回り込んできたのだ。

「よぉ、飯屋のねぇちゃん! お前、これから夜の相手してくれねぇか?」

それは聞いたとこのない声で葵の体がブルリと震えた。
この街の人ではなさそうだ。

ということは旅人?
だけどこんな下品なことを言う人、今まで見たことがない。

「ちょうど風呂に入ってるみてぇだな。店の中で待ってりゃいいのか?」

相手は複数人いる。
葵は必死に息を潜めて声を出さないようにした。

外はまだ明るいというのにこんなことをされるなんて。
葵が返事をしないでいると、男たちは舌打ちしつつどこかへ歩き去って行った。

ホッとすると同時に一粒涙がこぼれて湯船に落ちた。