村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

山で夜を明かすのはとても危険なことで、葵1人では到底できないことだった。

明日提供できるのは餅だけになりそうだ。
そう思いながらもち米屋の戸を叩いた。

「葵ちゃん、大丈夫だったかい?」
すぐに出てきてくれた女将さんが葵を店の奥へと引き入れた。

そして外に誰もいないことを確認して戸をしっかりと閉める。

「女将さん、私もうなにがなんだか……」

住居スペースとなる上がり框にへなへなと座り込んでしまう。

それを見た女将さんが冷たい井戸水を差し出してくれた。
柄杓のまま水を一気に飲み干すと少しだけ気分がよくなる。

「庄屋の嫁いだ舞ちゃんがね、あんたのことをいい振る舞ってるんだよ。うちにまで『葵にもち米を売るな』って言いに来たんだからね」

目を吊り上げて言う女将さんに葵の目が震えた。
舞がそこまで自分のことを嫌っていたとは思わなかった。