村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

両親を失ってからひと月後、葵はひとりで店を開けていた。
「今日もいい天気。旅人さんたちも歩きやすいかな」

秋の日差しは優しくて心地良い。
店に暖簾を出して大きく伸びをしたとき、視界にきらびやかな着物が見えた。

「舞ちゃん?」
村であれだけ立派な着物を着る人は舞しかいない。

舞は村一番の庄屋との結婚も決まっているらしいし、順風満帆のようだ。

着物を着た女性は一瞬足を止めて振り向いたように見えた。

だけどそのまま行ってしまった。
舞ちゃんじゃなかったのかな?
葵は見えにくいメガネをかけなおして首をかしげたのだった。