村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

その言葉を父親は鼻で笑っただけだった。
「店を大きくさせてどうする?」

「どうするって……」
「俺たち家族が行きていけるだけの稼ぎがあればそれでいい。食べるものも、着るものも困ってない。今が一番いいはずだ」

「でも。舞ちゃんはもっといい着物を着ているし、他の子たちだってみんな……っ」

途中で言葉を切ったのは父親からジッと見つめられていると気がついたからだった。

なぜかだ言葉が喉から出なくなって、胸の奥へと沈んでいく。

「いい着物を着たあとはどうする?」
「え?」

「いい着物を着たら今度はいいかんざしがほしくなる。履物だって変えたくなる。欲はどんどん深くなって店をどれだけ大きくしても追いつかなくなるんだ。

いいか葵。稼ぎよりも毎日お客さんに満足してもらえる店を目指せ。1人でも満足させることができなかったら、その店はいずれダメになる」

父親はそう言って洗い物を再開させた。