村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「もう! 変なこと言っていないで、行きますよ!?」
葵は顔を真赤にして陽神のお尻を叩いたのだった。

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葵が妊娠したことは事前に村人たちに伝えられていた。

それを知った村人たちは自分こそいい品をと競争でもするかのように沢山のお祝い物を持参してきていた。

「みなさま、私のために立派なものを用意してくださってありがとうございます」

葵はひとりひとりに丁寧にお礼を言いながら品物を受け取っていく。

中にはそれほど裕福じゃない家庭の娘が、自分の大切な簪を差し出してくれた。
「ダメよ。これは受け取れないわ」

「いえ、いいんです。私もいつか神様のような人と結婚したくて。これは願掛けでもあるんです」

赤い簪はかなり使い込まれていてあちこち剥げて、椿の柄が半分ほど削られている。

この子がとても大切にしてきたものだとひと目で分かるものだった。