村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

水害事件が起きた一月後には村は元通りの姿になり、陽神が言っていた通り作物も順調に育っているようだった。

「よかった。村の人たち元気そうで」

あれから1度女将さんが葵を訊ねてきたときに聞いた話だと、悪い噂はぱったりと消えて店には活気が戻ってきたようだ。

それもこれも陽神のおかげだと、泣いて喜んでいた。
「ワタシも、葵が元気そうで嬉しい」

庭から村を見下ろしていたとき、陽神が後ろから近づいてきて葵の腰に腕を回した。
そのたくましい腕に抱かれるのはもう何度目か。

陽神の毎夜の溺愛を思い出して葵は少しだけ頬を赤くした。

「医師に診断を受けてからもう一月以上が経つな。そろそろ村にも報告しておくか」

陽神がもう片方の手で葵の腹部に触れる。
最近少しだけふっくらとしてきた気がする。

ツワリもおさまっていて、体調も安定している。
「村にも、ですか?」

女将さんはすでに知っていることだから、後は誰に報告しようかと頭の中で考える。

一瞬浮かんでいた顔は友人だった舞の顔だった。