村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

こんな黒い気持ちになってはいけない。
「ありがとう舞ちゃん。もう大丈夫だから。これは洗って返すね」

「うん。上まで行くの? 1人で大丈夫?」
「大丈夫だよ」

葵は舞から受け取った手ぬぐいをギュッと握りしめて、また石段を一歩一歩上がり始めたのだった。

☆☆☆

何度目かのお願い参りをしたその翌日のことだった。
朝から店の方で物音が聞こえてきて葵は目を覚ました。

枕元にあるメガネをかけて部屋の様子を確認すると、父親の布団が空になっている。

昨日まで起き上がることも苦しそうだったことを思い出してすぐに布団から飛び出して店へと急いだ。

そこにいたのはいつもの仕事着になった父親の姿だった。
厨房にはすでに汁物のいい香りがしてきている。

「お父さん、体は大丈夫なの!?」
「葵か、おはよう。今日はすごく調子がいいんだ」

そう言う父親の頬は赤みがさしていて、足元もふらついていない。