村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「そ、そうかな?」
自分の包丁さばきなんてまだまだで、夏と春にも劣るはずだけれど、そうやって褒めてもらえるとやはり嬉しい。

トントントンと小気味いい音を響かせてダイコンを切るのも好きだった。

いずれは包丁も使い慣れて、父親が作っていた料理のほとんどを自分で作れるようになるかもしれない。

葵はそんな淡い期待を抱いていた。
それから3人で朝食を作り、起きてきた陽神の元へと運んだ。

「葵はそんなに村が恋しかったんのか?」
随分と張り切って朝食を作った葵を見て陽神が訊ねる。

葵は慌てて「そうじゃありません」と、否定した。
けれど、恋しくなかったといえばそれも嘘になる。

どう説明すればいいかわからなくて、箸を置いて黙り込んでしまった。
「女将さんのことが気がかりか?」

「はい。そうです」
これは本当のことだった。

昨日女将さんがお祈りに来てからずっと気にかかっている。