村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

厨房に立っていても、その手付きにあぶなっかしいところは見られなかった。

「いいか葵。大勢のお客さんは来なくていいんだ。1日に3人くらい。自分が生活できるだけのお客さんでいいんだ」

父親は事あるごとに葵にそう言い聞かせた。
決して欲を出してはいけない。

そういう事なのだろうと、葵は解釈していた。
だけど葵も年頃の女の子だ。

同年代の子が綺麗な着物やかんざしをつけて外を歩いているのを見ると、どうしても目で追いかけてしまう。

お店がもう少し繁盛すれば、私もあんな素敵な格好をできるのにと。
その度に父親の言葉を思い出して、自分の欲を押し込めてきた。

この村には自分よりもずっと貧しくて、明日食べるものに苦労している子たちもいる。

そんな中で贅沢なことは言っていられない。
そしてまた葵は厨房に立ち、刃物を使わなくてもいい料理を作る。

こんな生活がいつまでも続いていくのだと、思っていたのに……。