朝のジョギングに誘われて、自転車でついていく。
 遠慮すると『仕事は体力だろ?』と、ウインクを寄越される。
 驚いたのは、彼の肺活量。
 私と喋りながら走っているのに息が乱れない。

 晴れている日には、近くの公園で鷹士さんの竹刀を借りて素振りをさせてもらったこともある。
 
 ……十回もしないうちに、腕がだるくなった。
 へたりこんでしまうと、ひょいと立たせてくれる。まさに軽々、という感じ。
 鷹士さんは鍛えてるんだなあと実感してしまうのは、こんなときだ。

『子供扱いしないでください』

 わざと睨むと、『大人扱いしていいのか?』と返ってくる。
 顔を見上げれば、真摯な双眸が私を見つめている。
 鷹士さんの揺るぎなく、雄弁な表情に照れてしまう。
 いつか『してください』と希ってしまいそうで怖い。