初めて泣かずに、ぐっすり眠れた晩の翌朝。
 私は悠真さんの連絡先やアドレス、アプリのアカウントを全て消した。

 すると、どうしても鷹士さんの顔を見て、話したくなった。
 朝早く出てしまう彼に合わせて、頑張って起き出す。
 鷹士さんは嬉しそうに笑ってくれる。
 一緒にご飯を食べてくれて、一日のおおまかなスケジュールを教えてくれる。
 
 仕事は鷹士さんの予定に合わせて切り上げているけれど、以前より自由に残業ができるようになった。

 夜は休日に作りだめておいた物を解凍して食べることが多い。
 味気ないはずが、おしゃべりしながら喜んで一緒に食事してくれる相手がいる。
 とても美味しい。

 たまに私がゾンビみたいになっていると、ホットチョコレートが目の前に差し出される。

 ……この一ヶ月で鷹士さんがホットチョコレートを作ってくれた回数は、悠真さんが私に淹れてくれたアップルティーの回数をあっけなく超えてしまった。

 今から考えると、悠真さんのアップルティーは、私のご機嫌を取りたいときに差し出されていた。
 そんなことは滅多になかった。
 だって、私は悠真さんの機嫌を損ねないように先回りしていたから。

 鷹士さんとの居心地のいい暮らしをしている、今だからわかること。