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「日菜乃ちゃん」

 声を掛けられて、ぼんやりと瞼をあげた。
 段々、目の焦点が合ってくる。
 すると、目の前にもう一人の幼馴染がいた。

「鷹士さん……」

 呟くと、ほっとしたように微笑んでくれる。

「ここは?」

 周りを確認した。
 高い天井。見慣れない部屋。……ううん、見たことがある?

「俺のうち」

 ああ、そうか。
 ゆう君と何度か遊びにきたことがあったから覚えていたんだ。
 でも。

「私……。どうして鷹士さんの家にいるの?」

 訊ねれば教えてくれた。

「日菜乃ちゃん、俺に連絡くれたろう」
「え?」

 覚えていない。

「ほら」

 目の前に持ってこられたのは私の手。携帯を握りしめている。
 確かに、鷹士さんの電話番号へ発信した履歴が残っていた。
 鷹士さんは会議が終わってから気づいたのだという。

「……ごめんなさい」

 忙しい人にイタズラ電話をかけてしまった。
 謝ると、いいんだと首を横に振ってくれる。