日菜乃が中学生になった頃。
 皮肉なことに鷹士は、悠真に片想いする日菜乃の横顔に、異性を意識しはじめる。

 鷹士は、自分の本来の性質は猛々しいと認識していた。
 名前の通り、悠々と空を飛翔しているように見えるが、チャンスがあれば一撃で獲物を仕留める。
 日菜乃に出会わなかったら、人生がまったく別のものになっていただろう。

 ……合気道や剣道を習い始めたのは、自分を律するためでもある。

 悠真はわざとなのか無意識なのか。
 日菜乃がどれだけ可愛いくて色っぽいかを自慢してくる。

 時折、宗方の家に行くと日菜乃を見かけることができて、ときめいてしまう。
 同時に、五つも下の少女への慕情に罪の意識も持った。

 鷹士が日菜乃へ劣情を抱き始めた頃、悠真は父親から日本最高峰の大学へ入るよう命じられた。
 悠真に懇願されて同じ進学塾へ通うことで、日菜乃に会う機会は激減する。

 悠真と同じ東京の大学に受かって、鷹士は心底ホッとした。
 彼女を見ずに済むからだ。

 ……もちろん会えない寂しさを感じていたが。
 
 悠真からは時折、日菜乃の消息を伝えられる。
 都度、思いを馳せてしまう。
 初恋を振り切るために、同窓の女性とも交際してみた。