『日菜も日菜だ。僕のところを出て、すぐに男の家へ上がりこむなんて』

 まるで日菜乃を自分の所有物と思い込んでいるような、傲慢さ。

「彼女を愚弄するな」

 悠真の口から彼女の名前が出てくるだけでも、鷹士は身の裡がじりじりと焦げる気持ちになる。

 そんなにも感情を揺さぶられる相手を、なぜ手放した。
 ……お前が日菜乃ちゃんを大事にしてくれるなら、‪俺は彼女を諦めるつもりでいたのに。
 鷹士は心の中で大声で叫ぶ。
 
 ——鷹士と悠真は、父親同士が親友の間柄だ。
 大学の同窓で切磋琢磨した仲だと聞いたことがある。
 二組の家族は、比較的近くに住んでいたことから、生まれた時から交流があった。

 ……正直、その頃の鷹士は悠真が好きではなかった。
 天真爛漫で、欲しいものは欲しいと主張する悠真。
 甘やかされ、言うことを聞いてもらえるのが当然だと思っている。
 悠真は自分に懐いてくれたが、鷹士はなるべく避けていた。

 ところが、宗方家で日菜乃が生まれたことで状況は一変する。