……私は自分を『彼の恋人ポジション』だと都合よく勘違いしていた。
 けれどゆう君にとって、ううん。
 宗方家に住んでいる誰にとっても、彼の恋愛対象じゃなかった。
 だから一緒に住む事を許されていたんだ……。

 二十六年生きてきて初めて思い知らされた衝撃の事実に、瞼の中が熱くなってくる。
 視界が滲んできた。

 いけない。
 ゆう君に、彼の恋人は自分だと勘違いしていたことに気づかれたくない。

「日菜?」

 ショックで動けない私に気づかないのか、なんとも思っていないのか。
 ゆう君は気軽にソファから立ち上がった。
 ぽん、と肩を叩かれる。

「これから婚約者と結婚式場を見てくるんだ。ああ、気を遣って外出しなくてもいいよ。今日は泊まってくるからね。戸締りしっかり」

 パタンと玄関のドアが閉まった音がした。

 これからなにをどうすればいいのか、わからない。
 頭が全然働かない。