「日菜乃ちゃん?」
「あ……、すみません。鷹士さんの瞳に見惚れていまして」

 謝ったのに、鷹士さんは私をまじまじと見つめたまま、フリーズしてしまった。

「鷹士さん?」

 声をかけたら、彼は呪縛から放たれたように目をまばたきした。
 鷹士さんの顔が少し赤くなっている。
 今日はノンアルコールだ。
 ……もしかして、デミグラスソースに入れた赤ワインのせい?

 彼を観察していると続きを促された。

「あ、ああ。続きをどうぞ?」

 そうだった。

「お肉たっぷりめのほうがジューシーですが、タマネギも欠かせません」

 私が重々しく告げると、彼も厳かに同意してくれる。

「賛成」
「ですが、私。タマネギに弱くて」

 四分の一ほども切っていると、大泣きしてくる。

「任せてくれ」

 言いながら、鷹士さんがす……と立つ。

 彼をなんとなく目で追っていると、道具を持って戻ってきた。
 欲しかったものだったので、一目で用途がわかる。

 容器に野菜を入れ、蓋をしてからハンドルを引っ張ると、中の回転刃が野菜をみじんぎりにしてくれるやつ!

「存分に使ってやってくれ」
「謹んで!」

 私は両手で拝領した。
 目を合わせて、二人でふはっ、と吹き出した。

 鷹士さんとの会話は、なんて楽しいんだろう。

 ……食べ終わり。
 私がお皿を洗い、鷹士さんが隣で食器の水気を拭き取りながら話しかけてきた。