「はい、これ」

 花束とお菓子のバッグを渡された。

 ……多分『お詫び』という名の、甘やかし。
 あるいは、慰めだ。
 やっぱり、泣いているのを聞かれてしまったんだ。
 気を遣わせてしまったことに申し訳なくなる。
 でも。

「ありがとうございます」

 ここはお礼を言うところだ。
 受け取り拒否はあり得ない。

 涙ぐみそうになったのを誤魔化すため、花に顔を近づけて匂いを吸い込む。

「お花、いい匂い」

 芳しい匂いに、心がさらに浮き立つ。

「花瓶、役に立って嬉しいです」

 私が言えば、ほっとしたような笑顔になってくれる。

 ……なんで、ここまでしてくれるの?
 とくん、とくんと心臓が甘く鳴りだす。

「買った甲斐があった。菓子も好きだといいけど」

 鷹士さんが言いながら洗面所に入っていく。
 無意識についていきそうになり、慌ててダイニングの方向へ向かった。

 ダイニングのテーブルに花を活けた花瓶を乗せる。
 ……真ん中よりは端に寄せる。
 鷹士さんとの間に、あまり隔たりを作りたくない。

 部屋に入ってきた鷹士さんがテーブルの上を確認して、ギョッとしたようだった。
 ……あれ?